コラム

2020.08 京はやましろ、川の町…点として夜空に灯る送り火、新型コロナが覆う夏の夜

大文字 五山の送り火が、今年は大幅に規模を縮小した。梅雨に入り暑くなって一時期沈静化していた新型コロナウイルスが、都市圏を中心にまたもや活性化してきた。政府のGo Toキャンペーンのアナウンスに関わらず、感染者が日ごと増加傾向にあって如何ともし難い残念な状況である。
 今は出来るだけ濃厚接触を避けることしかなく、送り火でも観覧するための路上や屋上の密集機会を作らないという消極的な対処方法で、夫々の文字の起点や交点、末尾等を炎の点として灯して、辛うじて先祖の送りをしようと言う切ない現実である。

 例年8月16日、最初に点火されるのが左の大の字、如意ヶ嶽の京都市側にある大文字山である。山肌に刻まれた『大』の字が、市中のほぼ何処からでも見え、他府県からの人にとっては最も分かりやすいランドマークになっている。この支峰としての大文字山を抱く如意ヶ嶽は、勿論東山連峰の一峰で比叡山に次いで高い山であるが、標高はわずか485mに過ぎない。しかし、実はそのすそ野は広大で西は銀閣寺永観堂や南禅寺、南は京都~山科間の三条通、東は大津市の皇子山や紀三井寺に接する大きな山である。何処からでも登れるハイキングコースがいくつもあって、山好きに親しまれている。

大文字 送り火を見れない今年は、直接火床を訪ねてみたい。慈照寺(銀閣寺)北側のややきつい山道を約1時間で大の字の火床に着く。この大の字の交点に、真っ先に送り火が点灯され、修験僧によって護摩木がたかれ、先祖の供養が行われる。市内のどこからでも見れるように、このポイントからの京都の眺望も素晴らしい。帰りは南禅寺方向へ。途中、京の伊勢と言われる日向大神宮や天岩戸などの史跡を巡って、なだらかな坂を下ってこちらも約1時間。気持ちのいいコースである。

 室町末期、或は江戸時代初期から伝わるというこの送り火は、太平洋戦争を除いて、幾たびかの戦火やコロリ(コレラ)にもめげず、豪雨でも決行されてきたが、新型コロナウイルスには勝てなかった。PCR検査と隔離対応をしなかった無策のツケである。だが、融通無碍、形に拘らず先祖への感謝と未来人への期待を込めて、耐えるときには耐え、メリハリをつけ今年の夏は過ごしたい。(M)

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