コラム

2019.08 レトロ京都…特大オムライス680円、味も価格もレトロな学生街『百万遍』

百万遍

 『学生街の喫茶店』と言えば、70年代のガロの名曲…『君とよくこの店に来たものさ~♪』と口ずさみたくなる学生街もすっかり様変わりした。百万遍の京都大学と烏丸今出川の同志社、そして河原町広小路にあった立命館のトライアングルを中心に、府立医大、府立大、京都工繊、大谷、ダム女、平女、成安と、上京・左京のこの一帯は、昼間人口の半分ほどが学生だった。

 『時は流れて~サヨナラも言わずに別れたよ♪』最も学生が多かった立命は、衣笠から琵琶湖、そして茨木へと移転し、同志社も理系は京田辺に、成安は湖西にと分散し、そのプレゼンスを唯一保っていた京都大学も、スチューデントパワーはすっかり影を潜めパワフルだった学生はスタイリュッシュな優等生となり、上京・左京のTゾーンは小ぎれいな街角になった。
 先ず東西南北、縦横に走っていた市電が廃止され、4畳半の賃貸アパートが姿を消し、日常的に依存され、時にはサロンでもあった定食屋や食堂が無くなり、名曲喫茶やジャズ喫茶も姿を消した。ワンルームでもマンションであれば、料理もゲームも音楽もデートさえも室内で楽しめ、情報技術の進展と景観重視の観光政策が拍車をかけた。百万遍の看板撤去も、当然の成行きなのだろう。

喫茶店 ではあるが、百万遍から銀閣寺に向う今出川通り沿いには、今は見かけないカレーも餃子も親子丼もある定食屋さんや、中華料理や洋食屋さんが軒を並べ、特大のオムライスが680円と、文字通り味わいのあるストリートを構成している。中でも「カフエ コレクション」や「進々堂京大北門店」は、建物それ自体がそのまんま”昭和”という趣きで、店内の壁一面の本棚と木製のテーブルはメニューも含めてレトロそのもの。分厚い書物を読んでいる居座りの客もインテリアの大事な構成要素だ。流石に弊衣蓬髪、高下駄の学生こそ見かけないが、ノートPCを開いて打ち込む若者にも、小さなディスプレイを覗きながらスマホを操作する姿にも、コーヒーを飲みながら語り合っていたかつての姿が重なる。だが、話し相手は目の前にはいない。ネットの向こうには誰がいるのか、ただカシャカシャという入力音が静かに響いているだけである。(M)

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