コラム

2019.06 レトロ京都…『島津製作所創業記念館』で科学技術の粋を知る

島津製作所創業記念館 高瀬川の源流、一の船入れの近く木屋町通りに面して、瀟洒な2階建ての木造建物がある。京町家でもなく、学校でもない。何の飾り気も無駄もない簡素な佇まいが、品の良さと緊張感を醸し出している。このシンプルでレトロな建物が、明治以来の科学技術のリーディングカンパニー島津製作所の創業記念館である。

 島津製作所は1875(M8)年の創業である。創業家の島津は、薩摩藩主から苗字と家紋の使用を認められてはいたが、島津家の家系ではない。本願寺周辺によくある仏具屋さんであったが、次男の島津源蔵が仏具の制作から鋳物鋳造へと脱皮すべく木屋町二条に出店した。
 維新後に舎密局(現理化学研究所)や勧業場(館)が近くに開設されたこともあって科学の世界が大きく開き、仏壇仏具の細密な造形細工と塗装技術がベースとなって、先ずは理化学教材のメ-カーとして島津製作所が出発し、ノーベル賞受賞者を出すほどの企業になったのである。

島津製作所創業記念館 記念館の展示室では、実験器具から人体標本や模型、発電装置にレントゲン室、さらに宇宙衛星の部品・装置まで、『お好みにより、なんでも作り候』と言った島津源蔵の心意気が形となって展示されている。その全ての展示物が、緻密で精巧かつバランスのとれた造形作品であって、見る者を魅了し科学心を湧き立たせてくれる。無駄を一切そぎ落とし、そのものの目的を叶えることに徹した細工と造形は、科学技術の粋である。

 装飾細工の御殿のような仏壇仏具から、このシンプルな理化学教材や科学製品の制作に脱皮してきたプロセスに、年月をかけて磨き抜かれてきた京都の美術工芸の蓄積と、それに甘んじることなく常に新しきを追い求め、趣向を凝らしてきた京の伝統をみることが出来るだろう。(M)

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