コラム

2018.09 新京都八景…嵯峨野~嵐山 大宇宙に拡がる西方極楽浄土

渡月橋 平安京以前から洛中とは違った雰囲気を醸し出してきた嵯峨野・嵐山一帯は、近年ますますその魅力を高めてきている。『たけしのカレー屋さん』も、『美空ひばり館』も無くなってしまったが、次々とおしゃれなカフエやグッズショップが開業し、温泉も湧き瀟洒なリゾートホテルも繁盛している。伝統的な基盤を残しつつ、新たな趣向を年々加えてその魅力を増幅している。

平安京のはるか以前からこの地に住み着いていた渡来系の秦氏等によって、大堰川(保津川~桂川)に大きな堰が設けられる等の大規模な土木、灌漑が進められて、一帯がなだらかな傾斜を持つ田園地帯に変貌してきた。平安京のころになると、西の彼方にあるという極楽浄土の地として、お公家さん達の別院や菩提寺が建立され、公家社会の軋轢から逃れた公達や姫宮の隠棲の地となった。
桂川にかかる渡月橋を中心とする5km四方の地に、これらの国宝級の古刹・神社がこれもまた国宝級の文物を擁して点在する。さらに、その神社仏閣の庭園が、いずれも周りの自然環境と一体となって穏やかな景観を形作っているところに嵯峨野・嵐山の素晴らしさがある。その象徴が嵐山であり、借景の岩田山を含めて人の手による自然美の集大成とも言えるだろう!

法輪寺 近年、これら点在する名所・旧跡を結んで一帯に亘って展開される催しが行わるようになってきた。春の桜に始まり夏の鵜飼いと保津峡下り、秋は9月の観月会や紅葉狩り、渡月橋のライトアップと体験型の多彩な催しが行われ、洛中とは違った楽しみを提供している。

この嵐山にまた一つ、今までにない新しいイベントが誕生した。「上を向いて遊ぼう」をコンセプトにした「宙(そら)フェス」というこの催しは、宇宙を意味する虚空蔵菩薩を祀る法輪寺を中心に嵐山一帯で9月末に行われ、星空観察を初めトークショウや宇宙に因むワークショップ等多様なプログラムが組まれている。

 いにしえの西方極楽浄土の世界が、時空を超えて大宇宙まで拡がってきたのである。(M)

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